肌の上をちろちろと這う赤い舌。
ふいにそれが薄い唇の中へと収められ、反応を探るような色を湛えた瞳が、ずいと鼻先に近づいた。
白いと言われる己の肌すら色づいて感じられるほど白いその顔を見上げる。
雪のように白い肌は作り物めいていてセラミックの冷たさを思わせるのに、触れれば確かに体温があるのだから不思議なものだ。
重なる悪夢に疲弊して、肉に触れたくはないのに共寝を求める今、丁度良い相手だった。
「…お前サン、感度悪いねェ。」
「うっせー。今日は調子でねーんだよ」「だろうねェ。いつもより顔青くして。寝てねェし、食ってねェしって顔だ。珍しくハッカのアイスも食いやしない。本調子じゃないってのはすぐ分かる。」
「……チョコミントだっつーの。」
言い当てられて、面白くもなさそうに鼻をならせば、顔の形を確かめるように丁寧に頬を撫でられた。
まじまじと瞳を覗き込まれて、熱くもない、冷たくもない、曖昧な温度の唇が瞼に触れる
「だったらこのまま寝ちまやァいいのにサ。」
「寝れねーからヤろうつってんの。疲れりゃ寝れるじゃん?」
「…はいはい、ンじゃァまあ、ぐっすり眠れるようにヨくしてあげるよ。」
言葉と共に強まる愛撫に、不調により、いつもより温度の低い肌が次第に熱を取り戻す。
弓場白と同じ温度で曖昧に溶け合っていた肌が、輪郭を取り戻してしまうような気がして、
それを少し惜しいと思った。
0 件のコメント:
コメントを投稿