2014年5月10日土曜日

朝チュン@聖職者組


差し込む朝日がまぶたの裏を赤く染める。
眩しさに涙が滲んで、イブリスは大きな欠伸を一つ、伸びを一つ。
漸く目蓋を開けた。

…昨晩は飲み過ぎた。

体の重さに顔を顰める。
同じ量を飲んでも、昔と同じようにはいかないのは歳の所為だろうか。
もう少しだけ、眠りたい。
目を閉じて布団を引き寄せ寝返りをうつ。

ふわり。

柔らかな物を掌が掴んだ。
覚えのある感触に、二、三回手を動かす。 
それが何であるかは目を開けなくてもわかった。

おっぱい。

掴んでしまったそれと共に、思い出してはいけない記憶の端をも一緒に掴んでしまったようで、
イブリスは胸中で神の名を呼んだ。

恐る恐る目を開ける。
目の前には黒髪の見慣れぬ女。
昨晩はシスターリリーと飲みにいって…それから?それから…
誰だっけ…?思考を巡らせながらもう一度手の中の感触を味わうように動かすと、
ドスの利いた声が響いた。

「……おい童貞風味。いつまで触ってやがる。」
「うっ うおっ……あの…ん…?シスターリリー???」

いつもと違う髪色に一瞬わからなかったが、その女は紛れもなく良く見知った相手。
シスターリリーだった。
イブリスの手を叩くと、シーツを胸元まで引き寄せて上体を起こしたリリーが、
やれやれと眉尻を下げる。

「あーあー…やっちまった。…神父、この事は他言無用ですよ。いいですね。」
 「言われなくても…ってかお前昨日のこと覚えてんのか?」
 「全然。いいからその粗末な物を仕舞え。」
「粗末じゃねえよ!!!」

いつもと違うリリーの風貌に戸惑いながらも、状況を確認する。

二人とも全裸で、リリーの体には恐らく…いや完全にイブリスのものである歯形が点在している。
イブリスの体には覚えのない痣があったが、これはとりあえず置いておいて。
……完全に事後である。

しかも最悪なことに、相手はコイツで、しかもここは神の家だ。
互いに全く同じ感想を胸中に抱いたようで、二人同時に深い溜息を落した。
                                                            

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