2013年7月18日木曜日

あむあむ




時計の針も深夜を回ろうという頃。
じっと椅子に座ってパソコンと向き合っているのも疲れて来たと、
邑伺は注文書を印刷してビールを片手にリビングのソファに深く背を預けた。
背後に近づく気配には気づかない振りをしながら、手にした花の注文一覧に目を落す。

明日が休みだからやりたい放題だ!と張り切っていた七尾に待てをして仕事をし始めたら
ヘソを曲げてふて寝していたのだが、目を覚ましたようだ。
欠伸をする声と伸びをする気配、それから程なくして白い腕が後ろから首に回された。

すり、と耳の裏に鼻を寄せられ くすぐったさに首を竦める。
そのまま振り向かずにいると、熱い舌が首筋を這った。
それでも振り向くこともなく、 一覧に目を向けたまま動かずに居ると
七尾は位置を代え、邑伺の隣に座った。
向かい合う状態で腕を首に絡ませ、ちゅっちゅと音を立てて喉元を吸う。
甘えた様子に構ってやろうかとも思ったのだが、もう少し意地悪をしてやることにした。

邑伺の反応がないことに怒るでもなく愛撫を続ける当たり、
七尾も邑伺の意図には気が付いているのだろう。
言葉を交わすこともない。

愛撫は次第に体の下へと移り、七尾はずるりとソファの下に体を落すと、
邑伺の脚の間に入り込んだ。
一向に自分に視線を向けてこない邑伺の様子を時折チラチラ伺いながら、
どうすれば邑伺が仕事の手を止めて自分に意識を向けるのかと考えているのだろう七尾の様子に、邑伺も口の端が上がるのを堪える。
まるで、主人の気を引こうと躍起になっている飼い犬のようだ。

しばし脚の間で上目遣いに邑伺の顔を見つめていた七尾は、
突然服の上からぱくり、と邑伺の雄を咥えこんだ。
驚いて思わず書類から視線を外した邑伺と、反応を伺っていた七尾の視線が合う。
どちらともなくすぐに視線を外すと、それぞれ元していた作業に戻る。

服越しにではあれ、熱い吐息を掛けられ、器用に唇で愛撫をされて、邑伺の雄もすぐに熱を帯び始めた。
乱れ始めた吐息に、再び目と目が合う。
視線を合わせたまま、すっかり硬度を持った邑伺のものを服の上からべろりと舐めあげると
七尾は満足したようにくるりと背を向けた。
どうやら焦らし返す作戦に入ったらしい。

─どうせ我慢できない癖に。

後ろから七尾の顎を持って上を向かせる。
青い瞳が待ってましたと言わんばかりに細められてこちらを見上げる。
邑伺は七尾の散歩に行くのを待っていた犬の様な反応に笑いを零しながら、漸く待てのご褒美のキスをしてやった。


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