七尾さん、狐に食われる!の巻
痛みに意識が幾度も飛んで、飛んだ意識はまた痛みによって引き戻された。
それを幾度も繰り返し。繰り返し。
堪えた叫び声を、最早あげる力もなくなった頃、視界に揺れた紫色。
─ 馬鹿野郎、何で来たんだ。
怒りと共に溢れた安堵に、なんとか掴んでいた意識が急激に遠のいて。
そこから何がどうなったのかは分からない。
朦朧とした意識では理解のできない光景が繰り広げられて、
なんかもう面倒くさくなって俺は意識を投げやった。
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次に意識が戻った時には、見慣れた天井の下に居た。
無造作に周囲に置かれたタオルや包帯は手当ての為のものだろうに、
使われることもなくベッドの上に散らばっている。
なんでもいいから苦痛から逃れようと、再び意識を手放そうとしたが、それは許されなかった。
「っぐ…ぁ…」
激しい痛みが肩に走って、背をのけ反らす。
何をしてんだか、手当てもしてくれずに俺の上に跨っていた邑伺の熱い舌が肌をなぞったかと思うと、それは撃たれた傷口を抉り、体内にまで入り込んできた。
「いい子やね、弾見つけたから取ったるよ」
「っ…は…やめ…」
邑伺は俺の肉に歯を立て、血を啜る。
寒気がする程の苦痛に、押し退けようとする指先すら震えた。
「っあ…ぁ…ぐっ…」
「可愛えぇなぁ」
─マジで死ぬ。
─やめろ馬鹿。
そう悪態をついてやりたいが、苦痛に押し潰されて息をするのもままならない喉は、苦鳴を漏らすのすらやっとだった。
押し退けるのを諦めて縋るように回した俺の腕が、殺してくれと喉が鳴くのと 同時にその背を傷つけても、与えられた苦痛を分け与えるには至らなかったらしい。
「よぉ頑張りました、ってとこですか」
吸い出した鉛弾を床に吐き捨てた邑伺が、笑って俺の唇にご褒美宜しく俺の血に染まった唇を重ねた。 せめてもの抵抗に、とその唇に犬歯を立ててやる。
混ざり合った血が口腔に流れ込んだ。
「っつ… ははっ、それだけ元気があれば死ななさそうやん」
その言葉に鼻で笑う。
…死にそうにさせてんのはお前だっての。
激しい苦痛から解放されると、急激に眠気が襲ってきた。
押し当てられた護符の淡い光に俺を見つめる赤い瞳が細められるのを見届けると、
俺は漸く苦痛から解放された。
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